ウィレムスの音楽教育思想の出発点が、「音楽」と「人間の生」の関わりに対する発見だったということを、前回の記事で少し書きました。
ウィレムスの思想は、「音楽」と「人間の生」の緊密な関係性に関する発見が出発点となっており、これはそのまま終着点にもなっています。
確かに、人間の鼓動や情動は音の連なりや重なりを生み出す原動力であり、それらが構成されたものによって、私たちは音楽的な躍動や感動を得ているのではないかと感じます。
そうだとすれば、「音楽」は「人間の生」そのものであり、切り離して考えることはできません。
ウィレムスの音楽教育に一貫している思想は、
音楽の三要素=リズム・メロディ・ハーモニー と、
人間の生の三要素=生理的な生・情動的な生・精神的な生 とが
それぞれ密接に関わりあっている、というものです。
つまり、リズムは生理的な生、メロディは情動的な生、そしてハーモニーは精神的な生と結びついています。
薄暗くて申し訳ありませんが、この画像はかつて私が論文に掲載するために作成した、ウィレムスによる「音楽」と「人間の生」との関係性を示す図です。
「音楽」の三要素であるリズム・メロディ・ハーモニーと、「人間の生」の三要素である生理的な生・情動的な生・精神的な生のそれぞれが、下から上に向けて配置されています。
さらに、上には「精神的な極」、下には「物質的な極」という二つの極を設置しています。
「物質的な極」は、人間が生来的にもち合わせている根源的な現象であり、「精神的な極」に近づくためには、教育的なはたらきかけと経験や訓練、鍛錬を要する、という考えです。
「音楽教育思想」という視点でいえば、教育的なはたらきかけによって、人は「物質的な極」を出発して「精神的な極」に近づいていくための諸要素を獲得していくことができる、と考えられています。
ウィレムスは、この思想を軸に他の事柄も照らし合わせて考察を進めていますので、また折に触れてご紹介していきたいと思います。