前回の記事に続き、ジャック・シャピュイ先生によるウィレムスの音楽教育レッスンDVDの視聴記録、今日は第1段階のレッスンをご紹介します。
第1段階のレッスンの流れ
ここから第1段階のレッスン内容を実際に行われた通りの順番で記録していきます。
カッコ内に記した時間は、その実践にどれほどの時間が費やされていたかの概算です。
トータル60分ほどです。
現在行われているレッスンも、その時々で各実践の濃淡はあっても概ねこのような感じで進行すると思っていただいて差し支えないと思います。
これまでに私が国際会議やセミナーで実際に見てきたレッスンのうち、すでに記事にできている内容についてはその時に書いた記事のリンクも添付しますので、もしご興味がありましたらあわせてご覧ください!
小物楽器の音当てクイズ(約5分)
▶︎小物楽器の中から一人の子どもに好きな楽器を選ばせて音を鳴らさせる
→「一人の子ども」については挙手制。
その前に誰かが鳴らした楽器とは違うものを選ばなければならないルール。
ここでも楽器群には笛が含まれており、子どもたちや先生でシェア。
やはり気になってしまう......。(前記事参照)
▶︎一通りの楽器を先生が鳴らしていき、それぞれの楽器を選んだ人が挙手する
▶︎子どもたちに目を瞑らせ、先生がどれか一つの楽器を鳴らし、音あてクイズ
→答える子どもは楽器を指差すだけではなく音を鳴らす。
→答えた子どもが次の問題を出す(これを何度か繰り返す)。
▶︎二つの楽器を旋律的に(つまり同時ではなく)鳴らし、同様に音あてクイズ
もっと慣れてきたら今度は二つの音を和音にしてクイズしても良さそうですね。
子どもたちは積極的に参加していました。
なお、この実践で使用される楽器については以前記事にしたことがありますので、もし気になるなという方は以下の記事をご参照ください。
ベルの音当てクイズ(約4分)
▶︎先生が一通りのベルを鳴らすところを見せ、音を聴かせる
▶︎子どもたちに目を瞑らせて、音あてクイズ
→一つ前の音あてクイズと同様、答える子どもは実際に楽器の音を鳴らす。
▶︎慣れてきたら、ベルを二つに増やして旋律的に鳴らして当てさせる
→答える子どもが間違えたら、他の子どもが答える。
▶︎二つのベルを同時に、さらにリズムをつけて鳴らし、答える子どもも同様にする
先ほどと同じ「音あてクイズ」になりますが、今度は楽器が変わってベルです。
これは......かなり難しそう!
正直、私は自信ないかも...と思ってしまいました。
一つ一つのベルの形と音とが一致していないと答えられません。
まして、それが途中から二つに増えています。
しかし映像の中の子どもたちはといえば、一人の子どもが一度間違えただけで、あとはみんな正しく答えられていました。
普段のレッスンから同じものがよく使われているということでしょうか。
詳細は不明です。
ところで、ウィレムスのレッスンではたくさんのベルが使用されます。
見た目が全く同じで違う音が出るもの、同じ形ではあるものの大きさが違うもの(「家族」と呼ぶ)など。
今回のように音あてクイズに使用したり、ベルの音と同じ高さの音を声に出したり、音が減衰していく響きの余韻を聴いたり、耳で倍音を探したり……等々、さまざまな使い方をします。
耳の神経衰弱(約5分20秒)
▶︎同じ音が2つずつあることを説明するために、2つで1組になっている身体の部位を尋ねる
→目、耳、手、足、など。
子どもたちが挙げ終わったところで先生は鼻の穴を指して笑いを取っていました。
▶︎一人一つずつ箱を選んで持たせ、一人ずつ順番に自分が持っている箱を鳴らさせながら先生が次々に鳴らす箱の音と同じかどうかを聴き分けて答える
→先生が答える子どもに対して何度も「聴いて」と言っているのが印象的です。
▶︎一人終えるごとに箱を回収していき、全員終えたら最後一つずつ鳴らして「同じ、同じ......」とみんなで確認していく
スライドホイッスル(5分30秒)
▶︎先生がスライドホイッスルで鳴らした音の動きを真似して声で表現する
→この時、手の動きも一緒につけます。
▶︎二人組を作り、スライドホイッスルのような音の上行・下行を自由に声で表現して会話させる
→ここでも、手の動きをつけられる子どもには一緒につけさせます。
▶︎先生が一定の高さの音を長く伸ばし、同じ高さの音を声で出させる
▶︎音を伸ばす途中で一度タンギングをし、そのリズムと音の高さを声に出させる
カッコウ笛(3分30秒)
▶︎笛の「カッコウ、カッコウ」の音高に合わせて子どもたちに声を出させる
▶︎「カッコウ」のモチーフから4拍程度の即興のメロディを歌わせる
→歌いやすそうなメロディはみんなで歌い、そうではない複雑なものは褒めてそのまま次の子どもに歌わせる
青文字で下線を引いた部分、こういう進め方が、私がウィレムスの音楽教育のレッスンを見ていて「うまいなぁ〜」と思うところです。
できる子もできない子も、みんなが嫌な思いをしないような配慮がなされていて、それもわざとらしくなくて、先生方の対応力が素晴らしいです。
ハーモニックパイプ(7分30秒)
ハーモニックパイプもオリジナル楽器というわけではありませんがレッスンの中でよく使われています。
蛇腹状のパイプで、回す速度によって出る音の高さが変わります。
楽器の写真を撮っていなくて載せることができませんが、YouTubeで実際に音を鳴らしている映像を見つけましたのでよろしければご覧ください。
動画では赤色のものが使われていますが他にも青や緑、黄色など色々な色があります。
この楽器を使って、
▶︎子どもに持たせて(この時先生は「中に何か入っている?」と尋ねて覗かせていました)振らせてみて、出てきた音をみんなで真似して歌う
▶︎パイプを一人一本持ち、みんなで振る
この後で、一度に和音を鳴らすことができる笛(名称不明)を鳴らして聴こえてきた音と同じ高さを歌う実践などがありました。
リズム(3分30秒)
▶︎先生の動きと声を子どもたちが真似する
→空を両手で舞うような動きや「ドコドン」といって机を叩く動きや声を真似する。
▶︎手のひらや拳で、机を叩いたり撫でたり
→これらを組み合わせて規則的なリズムを刻む。
▶︎拳で二回、強弱を表現したものを繰り返す
▶︎先生が「hop!」と言うタイミングで机を叩く
→このタイミングは、すごく空いたりとてもタイトだったりする。
ピコピコハンマー(2分)
▶︎先生が一人ずつ子どもの手のひらにさまざまなリズムを叩き、同じリズムを先生の手のひらに叩かせる
→全員順番にまわりますが、子どもたちは嬉しそう、楽しそう。
自分が先生の手のひらを叩くのも張り切って取り組んでいるように見えます。
この実践で使われる「ピコピコハンマー」、おもちゃ屋さんなどでよく見かける赤と黄色のものではなく、もっと小さくて色は蛍光ピンクとグリーン、そしてなんと両面で違う音がするのです!
同じものが欲しくて長らく探していますが、まだ見たことがありません。
ヨーロッパのおもちゃ屋さんなどにはあるのでしょうか?
また行くことがあれば、探してみたいです。
手持ちシンバル+マレット(4分)
▶︎音の長短を体感させるため、先生が楽器を持って子どもたちのところに行き、一人一人順に自由にマレットで叩かせる。
▶︎音の強弱は先生が叩いて見せる
シンバルの片方のみをサスペンドシンバルのように手で持ち(伝わるでしょうか?スタンドはありません。)、もう片方の手にマレットを持って叩きます。
言葉のリズム(2分)
▶︎先生がお話ししながら、机で言葉と同じリズムを叩く
▶︎子どもたちと会話をしたり、真似させたりする
→子どもたちも自ら言葉を発しながら、それと同じリズムを叩く
歌(10分強)
▶︎ウィレムスのオリジナルの楽曲を4曲
曲のスタイルに応じて、雪が降るような動きを手で表現したり、先生がそれに合わせてピアノで即興演奏をしたりといった準備をするものもありました。
ここで取り上げられた4曲中2曲は、以前私が日本語の歌詞を考案した《おさんぽべんごし》と《ことり》でした。
楽譜も掲載していますのでよろしければご覧ください。
こうなってくると、今回のレッスンで歌われた残りの二曲も日本語の歌詞を考案したくなります。
他にもまだ、「ウィレムスのレッスンといえば!」というような頻繁に歌われる楽曲がいくつかありますので、それらもいずれ日本語にしたいです。
身体の動き(6分)
▶︎一人の子どもに教室内を走って回らせ、先生はその速度に合わせて拍を打ちながら即興で歌を歌う
→途中から他の子どもたちも合流して全員教室内を走りながら回る
▶︎先生が歌を途中で止めたり、速度を変えたりするのに応じて子どもたちは動きを合わせる
→途中で動きや速度を提示する子どもをチェンジしながらこの実践を何度か繰り返す
▶︎先生のピアノによる即興演奏に合わせて子どもたちは自由に動く(rit. などの速度変化には合わせる)
「身体の動き」もウィレムスのレッスンの終盤に必ず行われている実践です。
この流れを見ていただくと、レッスンの主導権が子ども→先生に変化していることがわかるかと思います。
子どもの動きに合わせて先生が拍を打ち、歌を歌うのですが、そのうちに先生の歌に子どもたちが合わせる...先生の歌が、子どもたちの動きを促すようなものになっているのです。
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第1段階の内容は以上です。
約60分のレッスンについて、順を追って記してみましたがいかがでしたでしょうか。
実際のレッスンを見ていると短時間でテンポよく手を替え品を替え、子どもたちの注意を絶えず引きつけるような工夫がなされていることを感じますが、そのぶん記録するのは大変でした(笑)。
とはいえかなりざっくりとしていてイメージしにくいところも多いかもしれず、その点は申し訳ありません。
「ここもっと詳しく書いて!」などご希望がありましたら、いつでもお気軽にコメントなどお寄せくださいませ。
いつか(そう遠くない未来に)、このようなレッスンのを国内で再現できたら良いなと考えています。
第2段階以降もまた記録していきますので、お楽しみに......!