ご無沙汰しております。
ブログの更新が、すっかり滞ってしまいました。
この期間にお越しくださっていた方には申し訳ございません。
これから少しずつ更新を再開していきたいと思いますので、またお付き合いいただければ嬉しいです。
それでは、今日の本題に入ります。
ウィレムスが創設した出版社・プロ・ムジカ
ウィレムスは生前、なんと自分でプロ・ムジカ(Pro Musica)という名の出版社を創設しています。
その目的は、自身の最初の著書である、『音楽的な耳 第1巻(l'Oreille Musicale, Tome I)』という本を、確実に世に出すこと・・・!
世界広しといえども、自ら出版社まで作ってしまった音楽家や音楽教育家はそういないのではないかと思います。
さらに驚くべきことに、この出版社プロ・ムジカは、現在も存続しています。
以下、フランス語のサイトになりますが、ホームページのリンクを掲載いたします。
ウィレムスの本は、廃盤になったものを除いて全て上記サイトから購入可能です。
なぜウィレムスは出版社を創設したのか・・・?
ウィレムスがプロ・ムジカを創設したのは、1940年。
この頃のウィレムスは、すでにジュネーヴ音楽院で教員になっています。
それで、本を出版したいと思った時に、どこかに依頼するのでなく、自分で創ろうという発想になったのはなぜなのでしょう?
このことについてウィレムスは明言していませんが、私はレイモンド・ダンカンとの暮らしの中にそのヒントがあったのではないかと感じています。
上記の記事にも書いたのですが、ウィレムスは元々ずっと音楽教育を受けてきた人ではなくて、それ以外の時期にたくさんの人生経験を重ねています。
詩人・哲学者・ダンサーだったレイモンド・ダンカンの思想に共鳴し、共同生活を送っていた時期もありますが、そのダンカンがパリに創ったアカデミア・レイモンド・ダンカンの中に、印刷所もあったのです。
(他に、劇場、画廊、講堂ホール、織物工場など・・・)
ダンカンは、アカデミアから数冊の本を出版しています。
ここでウィレムスが印刷作業を手伝っていたという記録も残っているので、その影響もあって、自分の本を世に出したいと考えた時に出版社を創ることがそれほど特別なことではなかったのではないかと推察しています。
ウィレムスの思想が反映されたロゴ
前回の記事では、ウィレムスの音楽教育の根本的な思想として、音楽の三要素である「リズム、メロディ、ハーモニー」が、人間の生の三要素「生理的な生、情動的な生、精神的な生」と緊密に関わっていることを述べました。
出版社プロ・ムジカのロゴマークにも、この思想が顕著に反映されています。
↑この画像が、プロ・ムジカのロゴ。
上向きと下向きの二つの正三角形が重なり合って、六角星を形成しています。
上向きの三角形は「リズム、メロディ、ハーモニー」を表しているので、それぞれの頭文字が記されています。
下向きの三角形は「生理的な生(vie physiologique)、情動的な生(vie affective)、精神的な生(vie mentale)」を表しています。
そして、外側の丸は、これら二つの三角形に含まれた諸要素の開花を意味しています。
ウィレムスの本には全て、表紙にこのロゴマークが印刷されています。
余談ながら、フランスのリヨンにはウィレムスの音楽教育を行なっているリメア(Ryméa)という音楽教室があるのですが、この音楽教室の名称も、リズム、メロディ、ハーモニー(フランス語ではhは発音しないので「アルモニー」となります)のそれぞれの頭文字から取っていると聞いて、妙に納得したことがありました。
Pro Musicaから本を購入したときのエピソード
ウィレムスの本は、先述したプロ・ムジカのホームページから購入できます。
私も研究をはじめた当初、ここから一通りの書籍を購入しました。
「ホームページから購入可能」とはいっても、Amazonのようにポチッとボタンを押したら決済まで完了というわけにはいかず、「電話かメールで注文すること」と書かれてありました。
そこで私は最初、簡単な自己紹介文とあわせて「これと、これと、この本を購入したいです!」という内容のフランス語のメールを出しました。
ほどなくしてフランス人の担当者の方(後から知りましたが、ウィレムスの音楽教育に密接に関わっておられる、とてもお優しい高齢の女性)とのやり取りが開始。
「これを買うんだったら、一緒にこれも買うと完璧ですよ!」などという大変ありがたいアドバイス(販促?)までいただき、メールでの数回の連絡を繰り返した後、日本までの送料も含む見積もりが送られてきました。
それを受けて、こちらでPaypalを登録し、支払いを済ませました。
数週間後、丁寧に梱包された状態で本が届き、感激したことをよく覚えています。
その後もこの女性からウィレムスの音楽教育に関する有益な情報をいただけたり直接お会いすることもできたりしました。
最初はポチッとボタン一つで簡単に購入できたら早くて便利なのに・・・などと思ってしまったものですが、そうではなかったおかげで新たな出会いに恵まれて、研究を進めていく上での重要な機会となったので、私にとっては大変ありがたかったです。